はじめに
私は人に比べて「読む」のが遅いです。どうすれば本を読むのが速くなるのか、そういう意味で「速読」に関する本を読み始めました。
気づけば「読書法」と名の付く本を十冊ほど読んでいたので、ガイドマップの形にまとめてみました。
読解の基礎
「本を速く読めるようになりたいなぁ」
「ペラペラページを眺めるだけで意味を掴めるようになりたい」
もちろん、私もそんな力を身につけたい内の一人です。
しかし、残念ながら、読解の基礎力を身につけなければ、どれだけ速読の技術を身につけても、熟読方法を勉強しても、十分な効果は得られません。
たとえば、文法も語彙もしらない言語・・・
フランス語で書かれた経済学の専門書を読んだとしましょう。
そんな本を速読しようとページを早くめくっても単語の内容はわからないし、文法もわからないので、意味を汲み取ることができません。たとえページをどれだけ早くめくれて、目をどれだけ早く動かせても、です。
日本語でも同じ。
むしろ、日本語の方が母国語としての自信があるので、単語や文法をあまり理解せずに読み進めていってしまいます。その結果、本に書いてある有用な情報を見過ごしてしまいます。
では、どのレベルまで文法・語彙を抑えていれば、本を読めるのでしょうか。M・J・アドラー、C・V・ドーレン『本の読み方』より引用してみます。
「初級読書 - 読書の第一レベル」より
①文字や単語を視覚・聴覚的に認識でき、はっきりと言葉を話すことができる段階。
②文脈をたどる、筋道をつかむ、言葉集めができる段階。
③文脈をたどって知らない単語の意味をつかめる段階
④ある本から得た概念を消化し、また一つのテーマに関する複数の筆者の意見を比較することができる段階。
①の段階は、このブログを読んでいる方なら既にクリアします。
通常、6~7歳頃までがこの段階であると言われています。
②の段階も、多くの人がクリアしています。
小学校の卒業レベルで②の段階まで進んでいると考えます。
③の段階から、難易度が上がります。
中学校卒業レベルと言ってもいいでしょうか。
高校受験現代文の問題などで出題される
「これはどういう意味ですか?説明しなさい。」
といった問題が不自由なく解答できる状態です。
前後の文脈から単語の意味を類推できればいいです。
④の段階は、高校卒業レベルです。
大学受験入試では、抽象度の高い概念(主観と客観など)を用いた文章が出題される他、複数のテーマを比較させる問題 ( 近代↔︎現代などの二項対立整理)が出題されます。大学受験現代文をクリアしてきた方であれば、十分に本を読む基礎力が付いています。
以下、④段階まで読書の基礎力を身につける方法を
文法、語彙、論理の3つの側面から解説します。
文法の力を身につける
③段階および④段階に到達するまでには、中学校卒業レベルの「国文法」を身につける必要があります。高校受験の文法参考書を一周するだけで「ああ、そうだったのか」と思える内容がたくさん。
呼応の副詞に目を向ければ、先を推測することができ、読解スピードが上がります。助詞・助動詞に着目すれば、小説家の細かい表現の違いを読み取れます。接続詞を見れば、文章の論理構造を見通すことができます。
語彙を類推するのも、論理構成を掴むのにも、文法の力は重要です。
参考文献
接続詞にフォーカスを当てている本。
語彙力を身につける
前提知識が多ければ多いほど、本は早く、そして深く読むことができます。
「本を読んでいてわからない単語があれば調べろ」
先生から痛いほど聞かされてきたセリフですが、今となってその重要さに気付かされました。今は重たい国語辞典などではなく、iPhoneで10秒あれば調べられます。
一度頭の中に基本的な単語を詰め込むのも悪くありません。覚えるべき語彙というのは、自分が読みたい本の内容にもよります。
哲学について書いてある本であれば、事前に抽象度の高い用語を覚えておいた方がいいでしょうし、料理について描かれている本ならば、事前に切り方(乱切り、細切り)といった説明を覚えておくべきです。
どのような分野の本でも、用語集、またはそれに準ずるものがあるはずです。そういった本を一冊手元に置いておくのも良いのかもしれません。
参考文献
論理力を身につける
文法と語彙を繋ぎ、新しい概念を理解したり、本に対し肯定や批判するためには、論理力が必要です。
論理力とは、さまざまな言語的能力の中でも、とりわけ言葉と言葉の関係 ー ある言葉と他の言葉がどういう仕方でつながりあっているのか ^ーをとらえる力である。
『新版 論理トレーニング (哲学教科書シリーズ)』序論より引用
演繹や帰納、逆・裏・対偶、消去方や背理法、三段論法など
言葉と言葉をどうつなげるのか、その方法論を学ぶことで、より速く・深く本を読むことができるようになるのです。
参考文献
まとめ
- 速読するにしても、熟読するにしても、前提知識が必要。
- 母国語の日本語はその前提知識が漏れがち。
- その前提知識とは、文法力、語彙力、論理力。
- 文法力は、語彙を類推したり、論理構成を知るために必要。
- 語彙力があれば、より速く・深く本が読める。
- 論理力は、文法と語彙を駆使して言葉のつながりを理解する力。
おわりに
文法、語彙、そして論理。
本を読む方法を知る前に、こういった基礎力を磨く視点を忘れてはいけませんね。
次回は「本の選び方」をテーマに記事を書きたいと思います。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。