最近、とある学生さんと話をしている時に
「伊藤さん、最近新聞とか読んでます?」と聞かれた。
「もっぱらSmartNewsばっかり〜、日経とかたまに職場で読むくらい」
「確かにニュースアプリって便利ですよね
でも、それは自分の欲しい情報に偏ってしまいませんか?」
と厳しいご指摘を受けた。衝撃を受けた。
学生の言う通りだ。
テレビや新聞を見る時間は減って、興味のあるサイトばかりはてブし、キュレーションサイトでも興味のある記事しか読まなくなっている。
ここ数年の間、スマートフォンの爆発的な普及によって、情報が身近な物になった。アプリ一つで、情報がすぐ手に入る時代になった。
どんな情報を、いつ、どんな形でも手に入れることができるし
手に入れないこともできる。
言い換えれば、僕たちは「情報を選ぶ」刑に処せられている。*1
この記事では、手元にあるiPhoneを眺め、どのような情報の偏りが生まれているのかを、3つのカテゴリを例に考えてみようと思う。
SNSサービス
今やほぼ全てのスマートフォンに入っているSNSサービス。
その多くに「フォロー」と「ブロック」の機能が付いている。
自分が「イイね!」と思った人しかフォローせず、「イイね!」と思われた人にしかフォローを許可しない。自分の気に入らない人はフォローしないか、ブロックするだけである。
自分にとって居心地の良い世界を作り、その世界が全てかのように錯覚してしまう。
この考えを一言でまとめてくれているブログが以下の記事だ。
記事の内容もとても面白いのだけれど、以下の抜粋文が面白かった。
もともとインターネットやらSNSやらはIT業界の住人が多いので、なんだかGAFAMにしてやられているみたいな印象が強いと思うのですが、日本と言う国は製造業の国です。
IT業界の人間は仕事柄ネットの世界にいる割合が、他の業界よりも多いと思う。
それだけ、ネットの世界は情報が偏っているわけだ。食料業界や、旅行業界の人たちはGAFAMをIT業界の人たちよりかは神格化していないだろう。
確かに、僕たちは価値観のあう人と一緒に過ごしている方が楽だ。けれど
旅をして、たまたま会った人と話してみる
バーで隣に座ったおっちゃんと話してみる
このような、自分の枠とは全く異なる世界に身を置くことも、時には大事だろう。
キュレーションサイト
ニュースアプリ、まとめサイトなども多くの人がインストールしているアプリではないだろうか。
記事冒頭の例でもあげたように、ニュースサイトやまとめサイトは
自分が見たい記事しか見ないという欠点がある。
無限にもある記事の中から「オッ」と感じたタイトル、またはサムネイルの記事を選んでいく。
ありがたいことに、人工知能さんがよく選ぶカテゴリを選出し、オススメの記事を紹介してくれる。*4
確かに自分の興味のある分野についてはどんどん詳しくなるかもしれないが、逆に興味のない分野についてはどんどん知識が乏しくなってしまう。
反面、新聞やTVなど、興味のない情報も含まれているメディアは、一見ノイズであるかもしれないが、それが新しい知識への糸口になることもあるのだ。
サブスクリプション・サービス
同じ構造は、サブスクリプション・サービス
いわゆる月額で〇〇放題のサービスも多く当てはまる。
むしろ、キュレーションサイトよりも顕著かもしれない。
僕はアマゾンプライムが大好きで、毎週末映画を見る。
アマゾンの人工知能はそれはもう優秀で
ディザスター系の代名詞『デイ・アフター・トゥモロー』を見た後は
似たような地球滅亡系の映画を「あなたへのオススメ」として延々とトップページに紹介してくれる。*5
ありがたい機能である事に間違いはないのだけれど
反面、全く違うジャンルの映画を見る機会を失っている。
これは映画だけでなく、音楽や、本、雑誌など、様々なサブスクリプションサービスに当てはまると思う。
情報社会に求められるのは「関心」と「ランダム性」
以上、「SNS」「キュレーション」「サブスクリプション」と3つのカテゴリを紹介下が、その他にも多くの例が当てはまる。
Googleで検索をするにしても、検索をかける用語・方法で得られる情報は大きく異なってしまう。*6
情報が溢れる時代、必要な情報を取捨選択することは専門性を身につける上で大切だ。けれども、それだけだと情報の偏った人間になってしまうのではないだろうか。
この問題を解決するためのキーワードは「関心」と「ランダム性」だ。
「関心」は、自分の関心のある分野はこれだ!と決め付けず、あらゆる分野に目を向けること。まだ触れていない分野に対して「食わず嫌い」をするのは良くない。
いつもSFやアクション映画ばかり見ているけど、たまには恋愛も見てみよう。
流行りのJPOPしか聞かなかったけれど、70年代のロックを聞いてみようかな。
経済の記事しか読まなかったけれど、技術の記事も読んでみるか。
あらゆる分野に関心を持つことで、バイアスから抜け出すことができる。
とはいっても、完全に主観を配して情報を選択することなどできない。
そこで活用すべきなのが「ランダム性」だ。
『ダーツの旅』を思い浮かべてくれると分かりやすいだろう。
「〇〇に行きたい!」という主観を廃し、ランダムで旅先を決定する。
ランダムで決めた旅先だけど、その土地にしかない面白さがある。
SNSでも、まとめサイトでも、読み放題見放題のサービスでも
『ダーツの旅』ぐらいのランダム性の機能があっても面白いのではないだろうか。*7
全く無関係の記事を1つ送ってくれる
全く知らない国の音楽を1曲聞かせてくれる
これら機能に対し、僕たちが「関心」を持って活用できれば、情報化社会はもっと豊かになると思う。
おわりにかえて 情報化と没個性
情報化社会によって、僕たちはいつでも好きな情報を選ぶ権利を得た。
情報格差によって、情報を扱える人と扱えない人で差が生まれるようになった。*8
これからは、情報を扱える人がどんどん増えていって、その格差は縮まるだろう。
その次にくる格差は、異質な情報を扱える格差だ。
みんながみんな、人口知能のオススメする映画しか見なくなったとき
それはまるで人口知能に操られた没個性の世界なのではないだろうか。
そんな時に、誰も知らないけれど、面白い映画を紹介できる人は、きっと重宝される。
これからくるこの格差に向けて、今日も色々な事に関心を持って生きていこう。*9
*1:サルトル先生の言葉をお借りして
*2:ちなみに、5ちゃんねるは両側面を備えているように思う。一つのテーマに群がる意味では同じだが、その中で語り合う住人は反発しまくっている。
*3:マッチングアプリはどうなのだろう?ランダム性があるようにも思うが・・・
*4:この機能のおかげで、僕のSmartNewsはコーヒーの記事ばっかり
*5:アルマゲドンを見た時は笑った。どんだけアルマゲドン亜種あんねん。
*6:Googleの検索方法は次の記事が逸脱
googleで賢く探すために最低知っておくべき5つのこと/検索テクニック、ノウハウ、裏技の手前に 読書猿Classic: between / beyond readers
*7:『斎藤さん』というアプリが流行ったのはこのランダム性にあると思う。
*8:いわゆるデジタルデバイド
*9:ランダム性のあるキュレーションサイトとか起業したらオモロイかね