これから、マジックの歴史についての記事を書いていきたいと思います。今回は"マジック"と"ゾロアスター教"との関わりについてのお話です。
「ゾロアスター教?なんだか高校の世界史か倫理で聞いたことがあるような・・・」
僕にとってのゾロアスター教についての知識はその程度ですので、参考資料を中心にまとめ、ほんの少しの個人的な解釈・意見を加えています。もし、間違い等ありましたら是非ご指摘ください。
この記事が、豆知識としてはもちろん、マジックを考える上での何かの役に立てば幸いです。
"Magic"の語源について
まず、ゾロアスター教とは、紀元前1200年前から紀元前700年ほど前に生まれた、世界最古の宗教です。"悪魔の概念"や"最後の審判"など、現在の多くの宗教のに通ずる考えが、ゾロアスター教から生まれました。
そのゾロアスター教を崇拝する祭司達のことを、マギ(magi)と呼んだそうです。これが、現在のマジック(Magic)の語源になったと言われています。有名なマンガの『マギ』や、僕も好きなアニメ『魔法少女まどか☆マギカ』などにも使われてますよね。マジック(Magic)に関係した単語は、以下のサイトがとても丁寧にまとまっています。
参考 魔術師の呼び名
ところで、このマギ達は星占術に長けていました。キリストの生誕を予言したことでも有名です。(c.f 東方の三賢人)紀元前3世紀頃にササン朝ペルシアという巨大な帝国がゾロアスター教を国教にしたこと、そして星座などの膨大な知識から未来を言い当てたこと、これらが古代ギリシア人からすればとても神秘的で、かつ魔法のように見えたのでしょう。
そう考えると、" 最もマジックらしいマジック "というのは、実は予言マジックなのかもしれませんね。
善悪二元論とマジック
ゾロアスター教には、神様が二人います。一人は、光の神、善の神であるアフラ・マズダ 。もう一人は、闇の神、悪の神であるアーリマンです。
この二人の神様は、ずーっと戦い続けているそうです。しかし、最終的には善の神であるアフラ・マズダが勝ち、救世主が現れ、最後の審判を下します。マギ達はもちろん善の神を崇拝しています。善い行いというのが、最終的に勝利することを知っていたからです。
マジックの百科事典『ターベルコースインマジック』の第一巻では、この善悪二元論に関連して、以下のような記述があります。
私達はエンターテイナーとして、観客を楽しませるために、マジックの幻覚的な部分を使っています。(中略) 観客は自然に、手品師が特殊な力を持ち、高い水準を持っていると考えます。(中略)手品師は、子供も母も父も、そしておじいさんもおばあさんをも失望させてはならないのです。
この一連の文を、どう解釈するかは人によって異なるでしょう。私はこう解釈します。
マジックとは、善いことをするためにある。
善いこととは、観客を楽しませたり、交友関係を広げること、自己研鑽なども含まれるでしょう。重要なのは、マジックを悪いことに使ってはいけない、ということです。
たとえば、マジックの知識をスリや詐欺に活用することは難しくないと思います。しかし、それは本来のマジックから外れており、誰かを失望させる行為になるのです。
ターベルは、Magicの語源からゾロアスター教のマギの教えを記すことで、当たり前だけど重要なことを、これから手品を学ぶ人に伝えたかったのではないでしょうか。
おわりに
今回の記事は短いですがこの辺りで。
なんだか、僕たちマジシャンのルーツが世界最古の宗教にあったんだと思うと、少し誇らしい、ちょっとかっこいい気持ちになりますね。
いや、ならないか (中二
参考文献・参考URL
→『ターベルコースインマジック第1巻』のレッスン1、21頁から26頁にかけて
→ No.024にゾロアスター教に関する記載。GoogleBooksで見れます。
→ゾロアスター教について詳細に記載されています。
→ゾロアスター教成立時の時代背景について。MAZDAに関する記載も。
参考 Wikipedia:マギ
→マギに関する記載。
参考 Wikipedia:奇術
→語源に関する記載。