図書館で、ふと目に入った本。
今回レビューする本は『本を読むときに何が起きているのか』という本。
結構分厚い本で、しかも中身が結構難しいとあり、読み終わるまで時間がかかってしまいました。
大学の図書館でふと目に入り、それでいてとても面白そうだったんです。
ニューヨーク・タイムズやロサンゼルス・タイムズなどの数々の有力誌で大絶賛されたこの本。
まずは、どんな本なのかご紹介しましょう。
どんな本?
タイトル通りの内容の本です。
本を読むときに、いったい何が起きているのか、その答えを探す本です。
しかし、俗にいう読書方法なんかをまとめた本ではありません。
そして、社会科学的、統計などを用いてデータを集めた本でもありません。
「本を読むときに、いったい何が起きているのか」
その答えを、現象学という哲学の観点から見い出す本です。
巻末の解説から、一部抜粋してみます。
「現象学」とは、世界やそこで生じていることをできるだけ先入観抜きに、経験の観点から、近くや意識に現象することから捉えようとする考え方である。
つまり本を読む時、私たちの体や心に生じている現象をとくと味わい観察してみようという次第。
ようするに、本を読むとき、心の中で一体何が起きているのか、筆者の経験からできるかぎり、多くの人に当てはまるであろうことをまとめた本、ということになります。
特筆すべきは、この本のデザイン
さて、この本が結構かたっくるしい内容の本であることがわかったと思います。
本来ならこんなテーマの本、表紙だけ見て閉じます。
しかし、テーマより惹かれたのはこの本のデザイン性でした。
百聞は一見にしかず。何枚か見てみましょう。


どうですか?お洒落でしょう?笑
それも当然、この本の著者はブックデザイナーという職業の方。
大学の専門書のように、ただの面白みもない文字の羅列より、何倍も目を惹かれ、それでいて本の内容もぐっと伝わってきます。
次に、この本から印象に残った箇所を少し紹介しようと思います。
この本で印象に残ったところ
P.5~ FICTIONS より
読書体験を思い出す時、私たちは連続展開するイメージ群を脳裏に見ているのだ。
読書体験は映画鑑賞のようなものと想像しがちだ。
しかし実際はそうではない。
読書は映画鑑賞ではないし、映画鑑賞のようなものでもない。
本を読むことと、映画やアニメを見ることの何が違うのでしょうか?
両方とも物語を追いかけ、それでいて目でみる視覚文化という点では共通しています。
この本の第1章では、小説の登場人物にフォーカスを当てていますが、映画と小説との違いはそこにあるといえるのでしょう。
ただの、挿絵もない、文章だけの小説を読む時、あなたは登場人物をどのように思い浮かべますか?
この本では、私たちは、小説の作者が提供するかすかな登場人物の特徴から、とてもぼんやりしたイメージを浮かべる、と言っています。
そしてそのイメージは、時と場合によって変化します。
本を読む人がどのような経験をしてきたかによって、登場人物は常に変化し続けるのです。
ここに映画と本との大きな違いがあります。
映画の登場人物は、常に変わりません。
いつ映画を思い返しても、浮かび上がるのは、役者さんが演じる声、姿でしょう。
この点において、本と映画は異なる、ということです。
また、この章からもう一つ、印象に残った一文を引用。
お気に入りの小説の映画化作品を見る前によく考えて欲しい。
その映画の俳優が、小説の登場人物として永遠に脳裏に刻まれてしまう可能性が高い。
これは、非常に危険なことである。
この文、とても納得させられました。
というのも、この前「新世界より」という小説を読んだのですが、小説を気に入ってからアニメバージョンを見て、それ以降この作品を思い返す時、全ての登場人物がアニメの作画で再現されるからです。
映画化、ドラマ化、漫画化、アニメ化、ゲーム化・・・。
小説が人気になると、すぐ上のように、登場人物が固定化されてしまいますよね。
お気に入りの小説、その付き合い方まで考えされられます。
では、次にこの本がどんな人にオススメなのか書いてみたいと思います。
どんな人にオススメ?
小説をよく読む人
私はそこまで多く小説を読むことはありませんが、それでも共感できる所が多々ありました。
普段から小説をよく読む人なら、それだけ楽しめるのではないでしょうか。
小説の読み方がわからない人
小説を読んだはいいけど、数ページで挫折してしまう・・・
でも専門書なら読めるんだ。そんな人にとって、小説を読みはじめるきっかけになるかもしれません。
シュールレアリスムな作品が好きな人
超現実主義。つまり、人びとがつくりあげてきた制約、常識を超えて、思考の裏側を表現しようとする手法。
簡単に言えば「普通の人から見たらわけわかんない」
そんな作品を見る時の、手助けになる本かもしれません。
さいごに
読書に関する本は結構ありますよね。
その中でも、哲学という一面から見た、結構異端なこの本。
正直言って、一度読んだだけでは到底理解できるものではありません。
何度も何度も読み直す、そんな価値のある一冊だといえます。
そういえば最近、本を読むときに頭の中で「声」が聞こえる人と聞こえない人がいる、という記事がありましたね。
cf:本を読むときに頭の中で「声」が聞こえる人と聞こえない人がいることが判明
この話題についても、この本は一部触れている所がありましたよ。
よければ、皆さんも一度この本を読んでみてください。
それでは最後までご覧いただきありがとうございました。